前篇では、代表森さんのNPO法人こまちぷらすを始めるきっかけというか、どういう人生を歩んで来て今のこの場所にいるのかを伺って書いてみました。実際には文章にならないような細かい部分もあったかと思いますがざっくりとわかっていただけたでしょうか。
ここからは徐々にこまちぷらすの事を。
北原
森さんは子育てのストレスからどうやって抜け出せたんですか?
実は私は、ある時保健師さんがくれた1枚のチラシで我が子を投げ飛ばそうとする自分から抜け出せたんです。「子育て支援拠点の一般市民募集」というチラシでした。当日会議室に入ると20代の人からお年寄りまで、子育て支援団体や行政、そしてママたち。この会議はとても印象に残っています。ママたちが現状の自分自身の子育てを本音で話すと支援団体や行政、お年寄りが真剣に聞いてくれていたんです。私自身も会議を重ねるにつれて会議が楽しみになって行き、自分自身の子育てのストレスもいつの日か軽減していました。周りのママが言う本音に耳を傾けてみると、悩みや困っていることも人それぞれ、それに対して他の出席者が言うヒントやアドバイスも人それぞれ。時には「そんなに困るようなことじゃないんじゃない、もっと細かいことを気にせず気楽に育児してみたら。」なんていうアドバイスが出てくることも。「そっか私は子育てで正解を欲しがっていたけど、人それぞれ、十人十色子育ての正解って違っていいんだ」。私は多様な価値観と出会えたこの会議で救われました。同時にこの雰囲気を体験してみて私は「この機会がママたちには必要だ」と感じました。
塩野入
こまちぷらすでは様々なワークショップもやっているんですよね?
こまちカフェは、おかげさまでだいぶ認知されて来ています。「こまちカフェという子育てしている人のためのカフェがあると聞いたから、お茶を飲みに行ってみよう」と来てくれる方も増えてきています。こまちカフェに来た方のうち、こんな活動をやっているんだとか、こんな人たちが来ているんだという部分に共感してくれた方が、「今度はこのワークショップに参加してみよう」と参加の幅をひろげていきます。
誰だって最初は不安です。知らない場所に、知らない人、「子育てしている人のための場所」と言われていたっていざ行ってみるとなると勇気がいるんです。ここで「カフェ」が力を発揮します。お茶したり、食事したりすることで自然とこまちカフェの雰囲気を感じられて、初めて来た人も、何度も来ている人も、スタッフも一体感を味わってもらえるようなスペース。私が過去に「ホッ」とする場所に小出町で出会えたように。来てくれた人にあの感覚を味わってもらえる場所になって欲しいと。
塩野入
実際にはどんなワークショップを開催しているんですか?
地域をどうにかするとかまちづくりって、特別な人だけがやってるように感じてる人が多い気がするんです。だけど、地域にはあらゆる人が暮らしていて、その人たちみんなで地域を作って行ける環境が必要なんじゃないかとも考えていて、その中のひとつの人たちが子育て世代。
こまちぷらすでは「子育てで孤立しない社会」を作ろうという理念で活動しています。理念に共感し活動のお手伝いをしてくださる方、自分の強みを活かしたい方、イベント主催などにご興味のある方が、「パートナー」に登録してくださっています。
中でも「パートナーぷらす会員」という制度では、全6回の研修も行っていて、「私には何ができて、私はこんな所が人よりも得意なんだ、私ならこの部分はやれる、手伝える。」ということに気付いてもらえる、「交流会」「勉強会」「相互メンタリング」のような場もつくっています。
北原
子育て世代を飛び越えた人たちにも目を向けているとか。
「フューチャーセッション」の事ですね。これは企業、大学の先生、行政などにもご協力も頂いて、生活の中での様々なテーマを元に当事者、支援者も集まり、現状の窮屈な部分や困難な部分を知りみんなで未来のアクションを生み出していくセッションです。子育てに限らず、障がいや介護などもテーマに入れてやったりもしています。
自分自身の今の状況や気持ちを話して、自分だけではなく周りの人も一緒に未来を描けるセッションにして、実際にアクションまでたどり着けるようにと開催しています。
塩野入
現時点でもたくさんの活動をしているこまちぷらすにとって、今後の展望って何ですか?
私が最近感じるのが、こまちカフェに来る人たちが実は地域や社会にとっての未来の担い手になって行く。こまちカフェは担い手が見つかる場所なのではないかという可能性です。
全国的にも地域や社会における「担い手不足」という問題はありますが。「こういう席があります。ここに座れる方は居ませんか」と言うような担い手探しの時代は終わってきている。むしろ、「おしゃべり会」や「フューチャーセッション」のような活動の中で、「やってみたい」から生まれる活動の方が長く続いていくのかもしれない。
こんな形の「担い手」がこまちぷらすでは誕生していくのではないかと。それだけ現代社会って多様化していますよね。1本のレールでは進んで行かず、いくつものレールが必要。全く鉄道が走っていなかった時代に線路を作って行くような時代なのかもしれません。もちろん、今まであった線路が大切で必要な時もあります。だけどそれだけでは足りないくらい、多様化している時代だなと。
北原
実際に、いくつかの活動も芽吹いているそうですね。
ある時、こまちぷらすの中でこんな事が起きました。
1人のパートナーさんが「障がいや難病の子を持つ親への理解を高める映画の上映会をやりたい」と提案しました。でもそのパートナーさんは、上映会をやる企画から実行まで全てが自分自身ではできないと。すると、別の会員さんが「その企画はとても素晴らしいと思います。とても共感できます。私が実行委員長をやります」
ここから上映会の企画はスタートしました。
実は実行委員長に名乗りを上げてくれた方も子育て中で仕事もしているんです。それなのに、上映会をやりたいという発案者の想いに共感して自らが実行委員長を勤める。このように「私のやりたい」を地域のニーズをひろいながら実現するだけでなく、「誰かのやりたい」を応援するというかたちでの参加も増えていくと豊かなまちになっていくのではないかと考えています。
私自身も「自分で何がやりたいのかわからない」時代がありました。誰もがやりたい事を持っているというのも誤解で、やりたい事が無い人もたくさんいます。でも、誰かのやりたい事を応援することはできますし、誰かのやりたい事を応援するのがとても上手な人もたくさんいるんです。だから、こまちカフェのように子供を連れて来て、のんびりお話しして、色々な人と接してみて自分自身の光る何かを見つけて欲しいですね。
自らの体験をもとに子育て世代を応援するNPO法人を立ち上げた森さん。今では、子育て世代の枠を超えて地域づくり全体にまで貢献して来てるというのは我々としてもお手本にしなければならない部分があると思いました。戸塚のみなさんは特に、今後もこまちぷらすには注目してくださいね。こまちカフェにも気軽に足を運んでみてください。
特定非営利活動法人こまちぷらすホームページ